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■有限会社粟飯原瓦工業(あいばらかわらこうぎょう)

和瓦の技術で佐原の街を守る

粟飯原瓦工業は地元佐原を中心に瓦の施工、修理を行う会社です。代々おつきあいをいただいている地元のお客様からの施工、修理、メンテナンスの他、建設会社や工務店から依頼いただく瓦屋根の施工を行っています。

瓦には大きく分類すると、和瓦(日本瓦)という伝統的な瓦と洋瓦(平板瓦)の2種類があります。洋瓦は平板で今風の住宅で多く使われており、比較的簡単に施工できる一方、和瓦は波型の瓦で綺麗に葺くには独特な技術が必要です。
我が社では洋瓦の今風の施工はもちろんのこと、お寺や和風の建築で使われる和瓦の施工もしています。また、重要伝統的建造物に指定されている佐原の町並みの屋根などは、今では手に入らない瓦で、その補修・修理なども手がけています。

創業約130年、瓦工事の老舗

我が社は私で5代目、創業の年はあまり正確ではありませんが、明治18年(1851年)と聞いています。当初は現在の千葉県香取市の旧山田町で創業し、その後曽祖父の代で佐原に移転し、現在に至っています。
移転した当初はいぶし瓦という瓦の製造も行っていましたが、祖父の時代になって、愛知県の三州瓦(さんしゅうがわら)の会社と出会ってからは、製造をやめて施工のみを行うようになりました。
私も父の後を継ぐため、専門学校で建築の勉強した後、国家資格の「かわらぶき技能士」の資格を取るために、愛知県瓦高等職業訓練校で技術的な勉強をしながら、実際に施工の仕事をして覚えるといったことを1年間続けて資格を取ました。その後2年ほど愛知県に残って営業の経験もして戻ってきました。

東日本大震災からの復興

東日本大震災の時には国選定の重要伝統的建造物群保存地区になっている地域では、60%〜70%は被害を受けたのではないでしょうか。地元の瓦屋は3〜4社はありますが、それでも足りず他の地域の瓦屋さんの応援も受けて対応しました。我が社でも大工さんから依頼を受け、40軒位は修復のお手伝いをしたと思います。
しかし被害がもっと酷かったのは、我が社がある佐原市役所近郊の地域でした。液状化現象で軒並み家が傾いてしまい、また私の自宅も傾いてしまいました。敷地内の瓦置場は砂で埋まってしまいましたが、お客様の屋根を修理するため一日かけて取り出しました。
お客様からは次から次へと修理依頼の連絡が入りました。毎日雨漏りのある家を優先的に周り、雨漏り対策をし、修理に必要な材料などを確認して数日後職人さんを向かわせるという繰り返しでした。
当初我が社で注文を受けたのは850軒位あり、3年から4年かけて修理しましたが、それでも実際には半分にも満たない400軒くらいしか対処できませんでした。その時何より辛かったのは、すぐ対応してくださいと連絡をいただいた、全ての注文に対応したかったのですが順番にしか対応がしきれなかったということでした。

和瓦を使った佐原の町並み

佐原の景観を守る和瓦の伝統技術を継承したい

洋瓦や他の建材を使った屋根が増えていますが、伝統的な和瓦も残していきたいと思っています。佐原地区で和瓦の施工技術を持っている人は数人いますが、高齢の技術者がほとんどで、その方々がいなくなったら佐原地区の和瓦の技術が絶えてしまう事になります。そうなれば、佐原の街並みの修理は、地元の人間では直せなくなってしまうという事になり、そうなってしまったら、一番寂しい事だと痛感しています。
夏は暑く、冬は寒い。更に高いところの仕事なので、決して楽ではありません。世の中にはもっと割の良い仕事がたくさんあります。本当に瓦が好きな人でなければこの仕事は無理なのかもしれません。和瓦の技術を覚えるには、現場で沢山の経験を積んでいくこと、正に職人の世界だと思います。
若い人が佐原の街の景観を守る和瓦の職人に魅力を感じ、その技術を絶やさぬように継承してくれる事、伝統的なものやその知識を継承していく事が、私たちに与えられた役割だと思っています。

【建築中の和瓦の屋根】

【補修用に保管している古い瓦】

有限会社粟飯原瓦工業

〒287-0003 千葉県香取市佐原イ4149

TEL:0478-52-2988 FAX:0478-54-3676